退職後、開業までにやっておくこと

1.退職後に必要な準備の全体像
退職してすぐに開業するのではなく、計画的に準備を進めることが成功のカギ です。私は、金なし・コネなしで退職後3か月で開業したので、スタート直後の集客がままならず、かなりもたつきました。そんな反省を踏まえて、退職から開業までにやっておくべきことをまとめると、少なくとも以下のようなステップが必要です。
1.退職前後の手続き(健康保険・年金・雇用保険の手続きなど)
2.事業計画の策定(ビジネスモデル・市場調査・資金計画)
3.資金調達(自己資金の確保・融資検討)
4.開業準備(事務所確保・設備導入・各種登録手続き)
5.営業活動の準備(名刺・HP・SNS・営業リストの作成)
6.開業届けの提出(税務署・役所など)
特に、資金調達や事業計画の策定は開業前にしっかり準備しておく 必要があります。
2.退職後すぐに行うべき手続き
① 健康保険・年金の手続き
退職すると、社会保険の資格を喪失 するため、以下のいずれかの方法で手続きを行います。
選択肢 | 手続き先 | 特徴 |
国民健康保険 | 市区町村 | 保険料は前年の所得に応じて決定 |
任意継続 | 退職前の健康保険組合 | 退職前と同じ健康保険に最長2年間加入可能 |
配偶者の扶養に入る | 配偶者の勤務先 | 扶養の条件を満たせば保険料負担なし |
また、年金についても、国民年金への切り替えが必要です。
② 雇用保険(失業給付)の申請
「基本手当(失業給付)」を受給する場合 は、ハローワークで手続きが必要です。 ただし、開業予定の場合は、「再就職手当」の受給を検討 するという手もあります。
◆再就職手当を受ける条件(一部)
・退職後に失業保険を申請し、求職活動を行う
・失業手当の所定給付日数の3分の1以上を残して開業する
・事業開始日の翌日から1か月以内に必要書類を提出 等
◆必要書類(一部)
・再就職手当支給申請書(ハローワーク窓口でもらえます)
・雇用保険受給資格者証明
・事業の開始日がわかる書類(登記事項証明書、開業届※1)
・事業の内容及び事業所の所在が確認できる書類(許認可証、契約書、請求書等※2)
・独立開業できる資格や技能を有する者は、その免許証等
※1.e-Taxなどのオンライン申請をオススメします。今は、税務署窓口に開業届を持って行っても、受領印を押してもらえません。一方で、オンライン申請ならば、開業日付つきの書類の発行が可能なので、証拠能力がバッチリです。
※2.申請時点で許認可証も契約書も請求書も無い場合は、業務用備品購入の際の納品書等でも代用可能な場合があります。
3.開業準備の具体的なステップ
① 事業計画の策定
事業計画書は、融資審査や事業の方向性を定めるために不可欠です。
◆主な内容
・事業の概要(ビジネスモデル・ターゲット層・市場分析)
・収支計画(初期投資・運転資金・売上予測)
・マーケティング戦略(集客・販売戦略・競争優位性)
※おすすめの作成ツール
・日本政策金融公庫の「創業計画書」フォーマット…丁寧に作りこむことで、目下の経営戦略や財務計画をブラッシュアップすることができます。また、資金が必要となった場合は、この書類で融資を検討することも可能です。
② 資金調達の準備
開業資金に関して言えば、やはり自己資金が最も重要です。融資を検討する場合は、自己資金と融資のバランスが重要です。事業内容や担保資産の状況にもよりますが、創業者の事業に対する本気度や返済能力を考慮すると、自己資金1:融資2 が、現実的なラインです。
資金調達方法 |
特徴 |
自己資金 |
金融機関の審査で自己資本比率が重視される |
日本政策金融公庫 |
創業者向けの融資制度が充実 |
地方自治体の制度融資 |
低利子で保証協会付きの融資が可能 |
クラウドファンディング |
事前に顧客の関心を得つつ資金調達できる |
③ 事業用の銀行口座・会計ソフトの準備
開業後の資金管理をスムーズにするため、
・事業専用の銀行口座 を作成
・会計ソフト(freee・マネーフォワードなど) を導入
・必要に応じてクラウド会計+税理士の相談体制 を整える
これにより、資金管理や確定申告がスムーズになります。…商工会では確定申告の支援をしてくれるので、商工会に相談してみるのも一つの手です。
4.営業活動の準備
開業後すぐに売上を上げるためには、以下の準備が欠かせません。
項目 |
内容 |
名刺作成 |
シンプルで信頼感のあるデザインを採用 |
ホームページ |
事業内容・問い合わせフォームを設置 |
SNS活用 |
X(旧Twitter)、Facebook、Instagram などで情報発信 |
営業リスト作成 |
ターゲット顧客のリストアップ |
上記以外で、特に 既存の人脈を活用することが重要 だと痛感しました。以前の会社の同僚や上司・取引先(競合しない範囲で)、友人・知人・親戚等に対して、開業のタイミングで情報を発信しておくと、「ご祝儀受注」から思わぬ新規受注に発展することがあります。
5.まとめ
退職後、開業までにやるべきことは多岐にわたりますが、以下の3つが特に重要です。
1.退職後の社会保険・年金・雇用保険の手続きを迅速に行う
2.事業計画と資金計画をしっかり立て、必要資金を確保する
3.営業活動の準備を整え、開業後すぐに売上を作れるようにする
これらを計画的に進めることで、スムーズな開業が可能になります。
当事務所では、開業前後の計画や、営業開始のための各種行政手続きのサポート を行っています。お気軽にご相談ください。