【その暴言、パワハラです】離職が止まらない職場の実例と中小企業が取るべき対策

◆はじめに

 今回は、当事務所に寄せられた質問をもとに、「職場での暴言・パワハラ」と「それが招く離職問題」についてお話しします。
 近年、労働人口の減少と労働者の売り手市場が続く中、人材の定着は中小企業にとって死活問題です。にもかかわらず、職場内のハラスメントによって若手・中堅社員の離職が相次いでいる企業も少なくありません。
 この記事では、暴言によるパワハラ事例とそれが引き起こすリスク、そして中小企業が現実的に取り組める改善策についてご紹介します。

■質問内容:幹部の暴言がひどい。離職が止まらない

 ある企業のご担当者から、次のようなご相談をいただきました。

 

 「うちの幹部が、とにかく口が悪くて…。機嫌が悪いとすぐ大声で怒鳴るし、高卒の現場従業員に対して“低学歴だからダメだ”とか言ってバカにするような発言も平気でします。それが原因なのか、若い人はすぐに辞めてしまうし、中途採用で入ってきた中高年層の人も長続きしません。どうすればよいでしょうか?」

 

 このような「上司による暴言・威圧的な態度」は、明確なパワーハラスメントに該当します。そして、それを放置することは、企業にとって深刻なリスクを伴います。

■結論:これは「指導」ではなく「パワハラ」です

 「厳しい指導」や「教育の一環」と誤解されがちですが、ご相談にあるような行為は、明らかにパワハラに該当します。

 今回の例で言うと、具体的には以下のような行為がNGです。

 

 • 機嫌によって大声で怒鳴る
 • 威圧的な態度で部下に接する
 • 「低学歴だからダメだ」など、人格を否定する発言

 

 これらは、職場において必要な「業務上の指導」の範囲を明らかに逸脱しており、不法行為として法的責任を問われる可能性もあります。

◆パワハラが企業に与えるダメージ

 パワハラを放置すると、次のようなリスクが現実化します。

 

1.離職者が増え、採用コストが増加
 若手社員がすぐ辞め、中途採用でも人が定着しない職場では、常に人手不足が慢性化します。その結果、

 

 • 求人広告や紹介手数料などのコストがかさむ
 • 業務の属人化が進み、生産性が低下する
 • 社員の士気が下がる

 

という悪循環に陥ります。

 

2.労働トラブルに発展する可能性
 パワハラの被害者が労働基準監督署や外部相談機関に通報した場合、企業は行政指導の対象となる可能性があります。
 また、被害者が損害賠償請求や慰謝料請求を行うケースもあり、企業としての信用にも傷がつくおそれがあります。

 

3.採用難・人材難がさらに深刻に

 ハラスメントが日常化している企業は、求職者の間でも「ブラック企業」として認識されがちです。SNSや口コミで悪評が広がれば、採用活動自体が立ち行かなくなりかねません。

◆中小企業が取り組める対策とは?

 では、このようなリスクを避けるために、何ができるのでしょうか。中小企業が現実的に取り組める対策をご紹介します。

 

1.パワハラの定義を「見える化」する
 まずは、社内で「どのような行為がパワハラに該当するか」を明確に共有することが重要です。
 厚生労働省の定義では、以下の3つの要素を満たすものがパワハラに該当します。

 

 • 優越的な関係を背景にした言動
 • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
 • 労働者の就業環境を害するもの

 

 社内研修や掲示板でこの定義を周知し、「どんな言動がNGか」を具体例を交えて伝えることが効果的です。

 

2.中間管理職への教育を段階的に実施
 多くの中小企業では、「中間管理職の育成」が追いついていないのが現実です。プレイヤーとして優秀だった社員が、そのまま管理職になり、「人を育てる技術」を学ばないまま現場に立っていることが多いのです。
 そこで、まずはOJT中心のミニ教育から始めてみましょう。

 

 • 若手社員との面談の進め方
 • 叱るときと褒めるときのバランス
 • 自分の言動が相手に与える影響

 

 こうした基礎的な内容を、1対1で共有しながら、少しずつ管理職意識を育てていくことが重要です。

 

3.社内の「相談できる窓口」を使いやすく
 社員が困ったときに声をあげられる仕組みがなければ、パワハラは表面化せず、深刻化してからしか発見できません。

 たとえば、

 

 • 月1回の定期面談
 • 相談窓口の存在や利用方法などの積極的な周知
 • 外部相談窓口の紹介

 

 など、小さなことでも「声をあげてよい」という空気を作っていくことが職場改善の第一歩になります。

 

4. 経営者の「本気」を見せる
 どんな制度や仕組みを整えても、「経営者が本気で取り組んでいるか」が社員には伝わります。

 

 • ハラスメントを見逃さない姿勢
 • 言動に問題がある管理職には、毅然と対応する姿勢
 • 全社員への定期的なメッセージの発信

 

 これらの行動を通じて、職場環境改善は企業の方針であるという強いメッセージを打ち出すことが重要です。

◆まとめ:ハラスメントのない職場が、会社と人材を守る

 ハラスメントは単なる「個人の性格の問題」ではなく、職場全体の空気・文化が生み出す構造的な問題でもあります。
 そして、放置すれば離職が加速し、人材難のなかで企業の競争力は失われていきます。

 

 • 暴言は「指導」ではない
 • パワハラは不法行為であり、見過ごしてはいけない
 • 対策は今すぐ、小さくても始められる

 

 中小企業だからこそ、全員の顔が見える関係性の中で、丁寧に環境を整えていくことが可能です。まずは、管理職の育成と職場の空気づくりから、一歩を踏み出してみませんか?

◆最後に:経営者の悩みに、実務から寄り添います

 当事務所では、ハラスメント防止に向けた就業規則の見直しや、現場での対応アドバイス、教育資料の提供などを行っています。
 人材が定着しない、雰囲気が悪い、何から始めればよいかわからない…。そんなときはぜひご相談ください。
 「挑戦・成長・継続」を支える職場づくりを、一緒に目指していきましょう。

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